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アイテム詳細

絲山 秋子

新潮社

グループ:Book

ランキング:6298

価格:¥ 1,365

ポイント:13 pt

発売日:2008-09

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タイトルの通りです、  (2009-01-09)
読み始めたらあっという間に引き込まれました。さすが絲山作品です。一気に読める量で、しかも読みでがあります、コストパフォーマンスの良い、切り取ることが上手い作家さんだと思います。


田舎の大学生ヒデがアルバイト先で知り合った年上の女性額子との生活から物語は始まります。冒頭にはアレなシーンが多くていつもの絲山作品なのですが、ヒデが溺れてゆく過程が非常にリアルで良かったです。何かに縋ったり、溺れたりするのはどうしようもない部分もありますが、どうしようもなくない部分の描写と、それい至る自身への冷静な判断とだからこそのキツさ部分が良く表れていて良かったです。




相変わらず、閉じた何人かの関係性を描く作家さんの中では私の好みで、今回もヒデと額子、ヒデと同級生、ヒデと額子の母などの関係の距離感やつたないけれど、その形をとらざる得ない部分がリアルでよかったです。とくにヒデが溺れてゆく部分から非常に世界に引き込まれました。



毎回思うのは、いつも絲山作品のオトコには共感できる部分がほとんどでリアルに感じられるのですが、オンナの場合はその作品での重要度が増すほど、「想像すらできない」よりは近くて「リアル」からは少し遠い部分があってその辺が読ませます。今回の額子もそうですが、ミステリアスというよりはちょっとベクトルが違うけれども、その少し先にあるオトコからすると『リアルで無い何か』があってそれが何なのか知りたくなってつい新作が出ると読んでしまいます。


少し変わった、溺れる話しに興味がある方にオススメ致します。

人が堕ちていく様がありありと…  (2009-01-05)
序章は、いきなりの展開。
物語の前半、ヒデが転落していくさまがありありと描かれていた。
飲んで人が変わる人、というのは全く自覚がないんですね。
自覚がないとなると自分の力で変わるのは難しいんだろうなあ。
退院してから、親友にそのことを告げても、
どうせ繰り返すだろう。もう付き合いたくない、
と言われ再び酒を口にし、苦しむシーン。
ここが一番、生々しく感じた。
そうだよね。
人ってそんなもんかもしれない。

そんななか、「よしたけ」のおばちゃんがいいね。

額子とヒデの再会後のささやかだが幸せな生活。
長く続くのか…などと思ってはいけませんね。
ヒデのことを思って髪の色が変わるほど心配した額子となら、再生していけると思いたい。

ただ絲山作品は、私には向かないと感じたので星はふたつ。
でももう一作は読んでみるつもりです。

「行き場のない思い」を昇華させる  (2008-12-30)
共感と云うより ところどころ同化してしまいそうなくらい 冴えたキャラクターによって
読み初めからいきなり リアルな映像が動き出す
たとえば 額子は「土屋アンナ」  ヒデは「松山ケンイチ」(そのうち西島秀俊)
 群馬も実にグンマで 元競馬場の塀の上には しっかり空っ風が吹いていた

いろんな見方ができると思うけど ここにはぼくたちの「愛情の理解力(表現力)」に対するもどかしさと
それを身につける術を持ち得なかった ある世代 ある家族 ある地方へのいたわりがある

そして「世界は変わらない…自分が変わらない限り」ということわりに戻る

さいごに爽快なカタルシスがあって 結局…ヒデと額子しか救われてないぢゃん…と
云うヒトもいるだろうけど 小説は慈善事業ではなので これで良いと思う

絲山秋子の「本格恋愛長篇」?  (2008-12-14)
……という帯を見たものだからびっくりしたけれど、いつもの小説でした、安心。ていうか、私にとってはいつも、ある意味、本格恋愛小説に読めていたのだが……
 どうしようもない者どうしがどうしようもなく寄り添っている、絲山氏の小説。今回の主人公ヒデは、社会人になってからあれよあれよという間にアルコール中毒になってしまい、そのどうしようもなさが、読んでいて本当に痛々しかった。しかも、対する額子は、事故で左腕を切断し、事故を起こした夫とやむなく離婚してしまったのだから。
 ヒデが断酒に苦しんでいる時、学生時代の友人と電話で話す場面は、痛かった……ヒデが、共通の知人でもある婚約者に暴力を振るっていたという落ち度はあるものの、墜ちて行くヒデに、常識的な友人の、何と冷たいことか……
 私がぐっと掴まれたのは、断酒を考え始めたヒデが、高崎競馬場に行く場面だ。競馬場が廃止されて数年、厩舎や宿舎の跡地には、畑地が広がっているとばかり思っていたヒデだったが、そこは真新しい住宅の建ち並ぶ新興住宅地になっていた……。よそ(東京)から来た者たちの、どの家も同じ、何のにおいもしない無表情な住宅地。その時、自分の中に生れる鋭い憎しみについて、ヒデは説明できない。“わかっているのは、俺の生れ育った街がこういう病巣に冒されているということだけだ”ヒデがアル中になっていく過程はあっという間で、理由らしい理由はなかったのかも知れないが、この場面を読んで感じる痛みはヒデと共有できる。今の時代の言いようのない暗さ(のちに語られる“行き場のない思い”)を抑制の効いた文章でぐっとつきつけられる。
 だから、続く場面で哀れな犬ホシノと偶然の再会を果たす場面も、ぐっとくるのだ。救い、という言葉がふさわしいかな。
 ヒデと額子の今後の幸せを切に祈ってしまった。……って、お話しでしょ、と言い切れないリアルさがたまらないです。

緻密な挑戦作  (2008-12-06)
絲山さんの小説は難しい、ときがある。それは著者自身が、小説の新しい可能性に挑もうとしているからではないだろうか。そしてそれは、読者にとっても向き合う姿勢を問われるものでもある。そんな風に書くと「小説は面白くなければダメ。読者に何かを強いるのは書き手の自己満足」みたいな声もあるだろう。でもそんな単純な話ではない。

口あたりのいいことが小説の魅力なら、読むものは他にいくらでもある。しかし苦みがあって食べにくくても奥に妙なる味わいを持つ作品に対するには、受け手にもある種の努力が必要なのではないかと思う。金払ってるんだから、みたいな考え方は好きじゃないなぁ。書き手は才能と労力を振り絞り、読み手は多少の金額と感覚を動員する。そんな互いの緊張感みたいな楽しみを感じさせてくれる一冊だった。

主人公の大学生ヒデは、年上の女性額子にありえない捨てられ方をした後、アルコール依存症との格闘を経て再び彼女と出会う(大雑把すぎるあらすじなので、自分で読んでくだされ)。きつい物語を額子の粗暴なやさしさが締めくくる、ある種のハッピーエンド。そういう時点で、モチーフ自体は普遍的とも言えるだろう。でもそれを描いていく筆使いは、日本の小説には見られない斬新さではないだろうか。

主人公が若い男という点は、いままでの絲山さんの小説とはちょっと異なる。しかしそれ以上に新しいのは、三人称の流れの中にときおり滑り込む一人称視点の微妙なズレ感。変調や変拍子を用いた楽曲のように、読み手を安住させない。しかしそのテンポになじんでくると、これが心地よかったりするわけですよ。くさやの干物(俺はダメだけど)みたいなもんだろうか。それはともかく、書きっぱなし、みたいなスピード感ながら実に計算された構造だと思う。

感想の別れる作品かもしれないけれど、小説という表現形式の好きなお方にはお勧め。他の人たちの読み方もちょっと気になるなぁ。ま、「解説なんていらねー」てのもあるでしょうが。

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