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中央公論新社
グループ:Book
ランキング:34966
価格:¥ 1,890
ポイント:18 pt
発売日:2008-06
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カスタマーレビュー ![]()
正倉院展に行きたくなった
(2009-01-01)
一気読みである。
それだけの面白さはある。
ただ…この作者には珍しく、商売というものを覚えるまで、独自の帯を生み出す苦労、博物館級錦の復元への傾注、これだけは書かなければ…と決めたものを、とにもかくにも制限枚数に収めたぞ!という臭いが、プンプンしてしまうのだ。
ひとつひとつのエピソードは、非常に興味深い。
「うんうん、それからそれから〜?」と思っていると、パッと別の話題に移ってしまう。
今の話の続きが、もっと知りたいのに…。
作者自身も(これまでの作品を思い起こしても)、本当はまだまだ時間をかけて、枚数を割いて、完成させたかったのではないだろうか…。
出版日と、正倉院展の日程を考えると、どうしてもそんな気がしてしまうのだ(笑)。
ただ、ひたすら正倉院展に行きたくなる…それだけは確かだ(笑)。
決して良くない訳ではない。
むしろ非常に引き込まれるからこそ、突然、次の話題に移ることで、集中の糸を切られてしまうことが、残念なだけである。
三十年の重み
(2008-10-15)
この人の小説はどれもそうだけど、やっぱりとしか言えません。
つまらない感想ですみませんが、圧巻です。
錦。
絹織物の一種ですが、それに取り付かれた男の話。
没落した名家の一人孫、吉蔵が傾いた家を立て直すために帯商いを始め、
最初はだまされたり躓いたり、苦労して特許を取った商品を真似されたり
裏切られたり・・・と紆余曲折を経ながらも、その技術と執念をもって
古代の「錦」修繕事業に取り組む壮絶な物語。男が主人公とはいえ、やはり
宮尾作品、彼を取り巻く女たちは耐え、忍び、儚くも強い芯を持った女ばかり。
文章は丁寧だし物語はまさしく織物のように少しずつ、だけど緻密に織られていき、
最後には荘厳な一枚布となる。その工程を見せてもらえるのは、同時代に生きる
ことの特権かもしれません。
尚、団十郎をモデルにした「きのね」のように、吉蔵にもモデルがいるそうです。
著者初?の男性が主人公作品
(2008-08-11)
きもの好きなら「龍村平蔵の帯」といえば、垂涎モノです。アンティークのきものを扱っているお店などで、目の玉が飛び出るようなお値段だったりもするのですが、その作品の存在感というのは、服飾品の域を超えて、まさに「美術品」と呼べるものです。
その龍村を創業し、織物に一生をささげた龍村平蔵をモデルに、宮尾登美子さんが30年の時間をかけてやっと書き上げたのが、この『錦』です。
主人公は、織物に取り憑かれたかのように、新しい目標を定めては、それに向かって一心不乱に前進していきます。そして、大名物茶入の仕覆の復元をきっかけに、法隆寺や正倉院御物の復元、さらには宮家の注文によるタピスリーの製作と、一織屋の域を超えた活躍をします。
仕事の業績が経糸なら、緯糸となるのは、彼をめぐる3人の女性との関係でしょう。十代から主人公に好意を持ち続け、仕事の場では常に吉蔵に付き従うお仙、曲尺屋から嫁入りして無口な中にも強い芯を感じさせる妻・むら、吉蔵の心の拠り所となる妾のふく。やはり、女性を描かせると宮尾さんの本領発揮という気がします。
ちなみに、タイトルになっている「錦」は、古くからある織物の技法で、さまざまな色糸から織り出された布のことです。
400ページ以上の大部ですが、なぜ龍村の帯に人が惹かれるのか、それを作った人たちがどんな苦労をなさったのか、という点に興味を持って、どんどん読み進んでしまいました。が、これまで読んだ宮尾作品としては、個人的にはもう一つ、突っ込みが・・・という気もするので、☆4つで。
錦
宮尾作品に珍しい男性が主人公
(2008-08-03)
構想30年!だそうです。
昔の女性の憧れ・龍村の帯の創業者の物語。
帯といえど、あらゆる織り方を考案し、芸術の域まで高め、さらには大名家やシルクロードの錦を再現する主人公ののめりこみっぷりが描かれている。
彼をめぐる3人の女性もこの小説の大切なキー。本妻、二号さん、そして男女関係はないが彼の仕事ぶりに10代のころから焦がれ、影のように寄り添う女。
芸術家の苦悩もすさまじいが、彼に振り回される周りの人間の悲惨と喜びの落差のすごいこと!
宮尾さんの筆致も、すっかり落ち着いたかんがあり、正直、昔の迫力はない気もするので☆4つです。

